「当店自慢の」で書き始めると、そこで手が止まります。
ホームページの原稿を書こうとして、最初の一行で止まった。飲食店の店主から、いちばんよく聞く話です。閉店後のカウンターでパソコンを開いて、「当店自慢の」まで打って、その先が出てこない。書けないのは、文章が下手だからではありません。書き出しが、店の話ではなく広告の話になっているからです。
「当店自慢の」「厳選した素材」「こだわりの一品」。この三つは、どの店のサイトにも載っています。載っているということは、読む人がすでに何十回も読んだ言葉だということです。書いた瞬間に、隣の店と同じ棚に入ります。
原稿を書くときの決まりは、一つだけで足ります。その文を隣の店のサイトに貼っても成立するなら、書き直します。成立しないなら、それがその店の原稿です。以下は、飲食店のサイトで文字数の多い三つのページについて、その決まりをどう当てるかの話です。
コースの説明は、幹事が上司に見せる文章として書きます。
コースの原稿でいちばん多い止まり方は、料理の名前を並べて終わることです。「前菜の盛り合わせ、本日の鮮魚、和牛のステーキ、デザート」。これでは、いくら出せば何がどれだけ出てくるのかが読めません。
コースを読んでいるのは、多くの場合その席に来る人ではありません。宴会なら幹事です。幹事は自分が食べたい店ではなく、参加者から文句の出ない店を探しています。そして決めたあと、社内にそのページのURLを送ります。読む人が二人いる文章だということです。
だから書くのは四つです。品数。時間。飲み放題が付くかどうか、付くなら何分か。税込の総額です。この四つが揃っていれば、幹事はそのまま転送できます。一つでも欠けると電話で確かめる手間が要るので、確かめずに次の店へ移ります。
もう一つ、書いてある店がほとんどない項目があります。当日に一人減ったらどうなるか。アレルギーの相談を受けるか。持ち込みができるか。幹事がいちばん不安に思っているのはここです。書いてあるだけで、不安が一つ減ります。
店のこだわりは、仕入れ先と手順を一つ書けば足ります。
「こだわり」のページは、いちばん長くなって、いちばん読まれないページになりがちです。長くなる理由は、抽象的な言葉で書き始めるからです。「素材にこだわり、心を込めて」と書くと、その後にいくらでも足せてしまいます。足すほど薄くなります。
書くのは、固有名詞と手順です。どこから何を仕入れているか。いつから使っているか。仕込みに何時間かけるか。何度で焼くか。誰がどこで習ってきたか。焼肉であれば部位と等級を、仕入れで日によって変わるなら変わると書きます。寿司であれば、おまかせだけなのか、その日に入ったものだけで組むのか。
固有名詞は、よその店が真似すると嘘になります。だから固有名詞で書かれた文章だけが、その店の文章として残ります。三百字あれば足ります。長さは要りません。
書けることと書けないことを分けるのも、このページの仕事です。仕入れが日で変わるなら、変わると書きます。書けないことを書かないほうが、書けることの信用が上がります。
アクセスは、駅を出てからの目印を順番に書きます。
住所と地図を貼って終わりにしているサイトが多いところです。ですが、たどり着けずに消える来店は、予約を逃したのと同じです。
書くのは、何番出口を出て、どちらへ何分、何が見えたら曲がるか、という順番です。目印は、しばらく変わらないものを選びます。コンビニやチェーン店は入れ替わります。信号の名前、橋、公園、大きな建物のほうが長持ちします。
二階以上の店や、路面に面していない店は、入口の写真を一枚入れます。扉の前で引き返す人が減ります。駐車場があるなら台数を、無いなら近くのコインパーキングまで書きます。車で来る人は、停める場所が読めない店を最初から候補にしません。
電車で来る人と車で来る人では、読む順番が違います。両方が来る店なら、駅からの道順と駐車場の案内を、同じページの中で分けて書きます。混ぜて書くと、どちらの人も自分の話として読めません。
業態が違えば、最初に書くべき一行も違います。
原稿の量を増やすより、トップページの最初の一行を業態に合わせるほうが早く効きます。
- 居酒屋なら、人数の幅と一人あたりの総額です。「四名から六十名まで」。
- 焼肉なら、看板の部位と、煙と匂いのこと。「無煙ロースターです」の一行を書いている店はほとんどありません。
- 寿司・和食なら、おまかせのみか、二部制か、前日までの予約が要るか。制約を先に出すと、行ける店かどうかが判断できます。
- カフェ・ベーカリーなら、営業時間より先に焼き上がりの時間です。行く時間で買えるものが変わるからです。
- ラーメン・定食なら、券売機の品書きをそのまま並べます。着く前に注文が決まります。
- イタリアン・フレンチなら、何のために使う店かです。記念日か、接待か、家族の食事か。
- バーなら、チャージと一杯の価格帯です。扉の前で足を止めているのは雰囲気ではなく、いくらかかるか分からないことだからです。
業態ごとの組み立てはそれぞれの業態のページに分けて書いています。
書けないときは、話した内容をそのまま渡してください。
原稿が書けないまま制作が三か月止まる。よくあることです。文章にしようとするから止まるので、文章にする前のものを渡していただければ、こちらで組みます。
- 券売機や手書きのメニュー、黒板を撮った写真。値段が入っているものです。
- 常連さんから、いちばんよく聞かれる質問を三つ。
- 電話で断ったことのある問い合わせ。書いていないことが、そこに出ます。
- 仕入れ先の名前と、いつから使っているか。
- 店を始めた理由を、3分そのまま話したもの。録音でも、相談の場で話していただくのでも構いません。
整った文章より、話し言葉のほうが材料としては良いです。整えるのはこちらの仕事です。写真をどう撮るかは写真の記事に分けて書きました。
うちの店の原稿は、どこから手をつけるか。
ページ数も、書ける量も、いま手元にある材料も店ごとに違います。だから、どこから書くかも店ごとに変わります。
30分いただければ、いまお店にある材料を伺って、どのページを先に埋めるか、どこはこちらで書くかをその場でお伝えします。原稿がまだ一行も無い状態からで構いません。むしろ書き始める前のほうが、書き直す手間が要りません。制作費は、トップページ1枚だけなら10万円(税込)から、7ページくらいの構成で25万円(税込)から。何を作るかで決まります。
オンラインで30分、無料です。その場で契約は求めませんし、後日の営業電話もしません。30分の無料相談で、いまある材料を見せてください。
よくある質問
原稿は、全部こちらで用意しないといけませんか。
全部でなくて構いません。メニューを撮った写真、常連さんによく聞かれる質問、店を始めた理由。この三つを話していただければ、こちらで文章に組みます。整った文章より、話し言葉のほうが材料としては使えます。組んだあとに、事実の確認だけお願いしています。仕入れ先の名前や仕込みの時間など、店の中でしか分からないことは、そこで直していただく形です。
他店と同じような文章になっていないか、自分では分かりません。
見分け方が一つあります。その文を隣の店のサイトに貼っても成立するなら、書き直します。「こだわりの素材」は成立しますが、「どこから何を仕入れて、何時間仕込むか」は成立しません。固有名詞と手順が入っていれば、その店の文章になります。書いたものを一度、その目で読み直してみてください。
原稿ができるまで、制作は止まりますか。
止めない進め方にします。写真とページの構成を先に決めておいて、文章を後から入れる形にできます。写真と原稿がそろっていれば2週間ほどが目安ですが、そろう順番はお店の都合で構いません。どのページから埋めるかは相談のときに決めます。手が空く時期が決まっているなら、そこに合わせて組みます。
料金・納期・進め方など、記事に関係なくよく聞かれることは よくある質問 にまとめてあります。